給食管理システムには、クラウド型とインストール型(オンプレミス型)のふたつのタイプがあります。どちらも給食業務を効率化するための仕組みですが、導入方法やコスト、管理の負担、カスタマイズ性などに大きな違いがあります。施設の規模や運用体制によって向き不向きが変わるため、それぞれの特徴をしっかり理解して選ぶことが大切です。本記事では、両者の違いを解説します。
導入コストと運用コストの違い
給食管理システムは、毎日の献立作成やアレルギー情報の管理、発注や栄養計算など、現場の業務を大きく支える大切な仕組みです。
近年は、クラウド型とインストール型(オンプレミス型)の2つのタイプが選ばれることが多く、導入コストや運用コストに違いがあります。
どちらを選ぶかによって初期費用、月々の負担、導入までの流れが大きく変わるため、特徴を知っておくことが重要です。ここでは、導入時と運用時にかかる費用の違い解説します。
クラウド型の初期費用と運用コストの特徴
クラウド型は、インターネットに接続できる環境があればすぐに利用を始められることが大きな特徴です。サーバーの購入や設置といった設備投資が必要ないため、初期費用を抑えやすく、小規模な施設や新しくシステムを導入する現場でも導入しやすいでしょう。
また、月額または年額の利用料を支払うサブスクリプション型で提供されることが多く、利用人数や使う機能に合わせてプランを選べるケースが一般的です。必要なところから小さく始められるため、段階的に機能を増やしたい施設にも向いています。
さらに、サーバー管理やシステム更新は提供元が行うため、現場で特別な作業をする必要がありません。最新の機能やセキュリティ対策が自動で適用されるため、安心して使い続けられます。
運用にかかる手間を減らしつつ、常に最新状態で利用できる点はクラウド型ならではのメリットです。一方で、継続して利用料が発生するため、長期的な運用を考える場合は総費用を比較しながら検討する必要があります。
インストール型(オンプレミス型)の初期費用と運用コストの特徴
インストール型は、自社のパソコンやサーバーにソフトウェアを入れて使用する形式です。
クラウド型と比べると、導入時に必要な費用が大きくなる傾向があります。サーバーやネットワーク機器の準備、システムを動かすためのインフラ構築、ソフトウェア本体の購入など、導入前にそろえるべきものが多いためです。
運用コストは、クラウド型のような月額利用料が発生しない分、費用を固定化しやすい点が魅力です。ソフトを買い切りで導入するため、長く使えば使うほどランニングコストを抑えやすくなります。
ただし、保守費用やサーバーのメンテナンス費用、セキュリティ対策などは自社で対応する必要があります。特に、システム更新やトラブル対応を内部で行う場合は、担当者への負担が大きくなることもあるでしょう。
運用を安定させるには、ある程度のIT環境や人的リソースが必要になる点を理解しておくと安心です。
導入コストと運用コストを比べる際の考え方
クラウド型とインストール型の費用を比較するときは「導入時の負担」だけでなく「長く使うほどどう変わるか」という視点も大切です。
クラウド型は初期費用を抑えられますが、月額利用料が続くため、5年・10年と運用した際の総額を考える必要があります。
反対に、インストール型は初期費用が高くなってしまいますが、ソフトの買い切りであるため、長期運用を前提とする施設ではメリットが大きくなることがあります。
また、システムの更新やサーバーの維持管理にかかる手間も比較ポイントです。クラウド型は運用の手間がほとんどなく、提供元が更新を行うため、現場の負担を減らせます。
一方、インストール型は自社での管理が必須となるため、専門知識を持つ担当者が必要になる場合があります。この点は、運営規模や人員体制によって向き不向きが分かれます。
施設の規模や運用体制に合わせた選び方
どちらが適しているかは、施設の規模や導入目的によって異なります。小規模施設や初めてシステムを導入するケースでは、クラウド型のほうが取り入れやすく、費用を抑えながらスタートできるでしょう。
一方、しっかりとしたIT環境が整っており、長期間使う前提で初期投資を行える施設であれば、インストール型が選ばれることもあります。
カスタマイズ性が高いため、自社の業務に合わせた細かい対応ができる点は大きな魅力です。導入時の費用は大きくなりますが、長く運用することで費用を抑えたい現場に向いています。
最終的には「どのくらいの期間で」「どの程度の機能を求め」「どれだけ運用に手間をかけられるか」を整理し、それぞれの特徴を比較しながら選ぶことが大切です。
保守・メンテナンスの違い
給食管理システムを長く安心して使うためには、導入時だけでなく、その後の保守・メンテナンス、そして運用にかかる負担も大切な検討ポイントになります。
特に、クラウド型(WEB版)とインストール型(オンプレミス型)では、保守や運用の仕組みも大きく異なるため、どちらを選ぶかによって現場の負担や必要な人員が変わってきます。ここでは、両者の「保守・メンテナンスの違い」について見ていきましょう。
クラウド型は保守・メンテナンスを任せられる仕組み
クラウド型の大きな特徴は、保守や管理をシステム提供側が担当してくれる点です。サーバーの運用やシステムの更新はベンダー側で対応するため、ユーザー側で特別な作業をする必要がありません。
たとえば、システムのバージョンアップや機能追加、法改正に合わせた仕様変更があっても、自動的にアップデートされるため、気づかないうちに最新状態で利用できることが多いです。また、データのバックアップや障害が発生したときの復旧作業もベンダーが担当します。
万が一、職員が使っているパソコンが急に壊れたとしても、データはクラウド上に保存されているため、新しいパソコンからログインするだけで作業を再開できます。現場の業務を止めずに使い続けられる点は、クラウド型ならではの安心材料です。
運用面でも負担が軽く、システムに詳しい担当者がいない施設でも導入しやすい特徴があります。特に、保育園や学校、給食センターなど、ITに強いスタッフを確保しにくい現場では、クラウド型は大きなメリットにつながります。
インストール型は自社で保守や管理を行う必要がある
インストール型(オンプレミス型)は、自社のパソコンやサーバーにシステムを入れて運用するため、保守や管理は基本的に自社で行う必要があります。クラウド型と違い、自動で更新されたり、障害への対応をすべて任せられたりするわけではありません。
そのため、社内にシステム運用ができる担当者を確保することが前提になります。システムのバージョンアップや機能追加が行われる場合は、現場のパソコンに再インストールしたり、設定をし直したりする作業が必要です。
また、ネットワーク環境やサーバーの状態によってはトラブルが起きることもあり、その際は担当者が原因を調べ、復旧作業を進める必要があります。
さらに、データのバックアップも自社で行わなくてはなりません。バックアップのタイミングを逃してしまうと、トラブル時に作業内容が失われる可能性があるため、定期的な管理が欠かせないのです。
保守・メンテナンスの視点から見える両者の違い
両者の仕組みを比べると、クラウド型は「保守を任せられる仕組み」であり、インストール型は「自社で管理する仕組み」といえます。
クラウド型はサーバーの運用、更新、バックアップ、障害対応などをベンダーが一括して対応するため、現場の負担は大きく下がります。専門的な知識がなくても安心して使い続けることができ、日々の業務に集中しやすい環境が整うでしょう。
対してインストール型は、自由度が高く、自社の環境に合わせた細かな調整ができる一方で、保守にかかる手間は避けられません。システムを安定して動かすために、担当者が日頃から環境を整え、トラブル時にすぐ対応できる体制をつくる必要があります。
どちらが良いかは施設の運用体制によって変わりますが、保守・メンテナンスを負担に感じやすい現場ではクラウド型が向いているといえるでしょう。
カスタマイズ性と拡張性の違い
給食管理システムを導入する際には、機能や費用だけでなく「どれだけ柔軟に使えるか」という点も大切な判断基準になります。
ここでもクラウド型(WEB版)とインストール型(オンプレミス型)では、カスタマイズ性や拡張性に大きな違いがあります。以下では、両者の「カスタマイズ性」と「拡張性」の観点から、その違いを見ていきましょう。
クラウド型はカスタマイズに制限がある仕組み
クラウド型の給食管理システムは、ベンダーが提供するクラウド環境上で動くため、基本的な仕様や機能は統一されています。そのため、自社独自の詳細な仕様に合わせて大きくカスタマイズすることは難しい場合が多いです。
たとえば「部分的に画面を変えたい」「独自の帳票を追加したい」といった要望があっても、ベンダー側が用意している範囲内でしか対応できません。
ただし、まったく柔軟性がないわけではなく、用意されたオプション機能を追加したり、選べる設定を活用したりすることで、ある程度の調整は可能です。
多くの施設で共通して利用される機能は標準装備されていることが多く、日常業務をスムーズに進めるうえでは十分に対応できるといえるでしょう。
インストール型はカスタマイズの自由度が高い
インストール型は、自社のサーバーやパソコンにシステムを入れて運用するため、環境を自由に調整しやすい特徴があります。
業務の流れに合わせた詳細な仕様変更や、既存の社内システムとの連携など、細かい部分まで対応できるケースが多く、柔軟なカスタマイズが可能です。
たとえば、帳票のレイアウトを独自仕様にしたり、アレルギー管理の項目を独自の基準で追加したりするなど、クラウド型では難しい調整も実現しやすくなります。
ただし、カスタマイズを行う場合は、開発費用や改修費が別途必要になることが多く、導入後の変更にも時間とコストがかかります。自由度は高いものの、その分だけ管理の負担やコストも大きくなる点を理解しておく必要はあるでしょう。
クラウド型は拡張性が高く、将来的な利用規模の変化に強い
クラウド型の大きな強みは、高い拡張性にあります。インターネット上の環境で動いているため、利用者数が増えたり、扱うデータ量が多くなったりしても、システム側のリソースを柔軟に増やすことができます。
たとえば、これまで数名で使っていた施設が、複数の部署や学校と連携して利用するようになった場合でも、契約プランを変更するだけで対応できることがほとんどです。
法改正に伴う仕様変更や、新しい業務に必要な機能が生まれた場合でも、クラウド型は対応しやすく、現場の負担を最小限に抑えられます。
インストール型は拡張性に課題があり、追加投資が必要になる場合がある
インストール型は、拡張性が低いことが弱点です。自社で準備しているサーバーやパソコンの性能が限界に近づくと、対応できるデータ量や処理スピードに制限が出てしまいます。
利用者が増えたり、扱うデータが増加したりすると、サーバーの性能が追いつかず、動作が遅くなることもあるでしょう。
もし、性能を超える必要が出てきた場合は、サーバーの買い替えや増設が必要になり、大きな出費につながる可能性があります。
とはいえ、自由度が高く、自社に最適化された強力なシステムを構築できる点は魅力です。カスタマイズ性の高さを重視する場合は、拡張性の課題とあわせて総合的に検討することが大切です。
セキュリティとアクセス環境の違い
給食管理システムを選ぶ際、機能や費用と同じくらい重要なのが「セキュリティ」と「アクセス環境」です。クラウド型とインストール型(オンプレミス型)は、セキュリティの考え方やアクセス方法にも大きな違いがあります。以下では、両者の特徴をわかりやすく整理します。
クラウド型は高度なセキュリティ対策をベンダーに任せられる
クラウド型の給食管理システムは、インターネットを通じて利用する仕組みです。そのため、外部からの不正アクセスや情報漏洩といったリスクはゼロではありません。
しかし、多くのクラウドサービスでは、専門の技術者による高度なセキュリティ対策が常に実施されています。暗号化通信、アクセス制御、24時間の監視体制など、自社では用意しにくいレベルの対策が行われていることが一般的です。
また、セキュリティに関するアップデートや法改正に合わせた対応もベンダー側が行うため、常に最新の環境で利用できる点は大きな安心材料です。自社で細かいセキュリティ設定を行う必要がなく、専門知識がない現場でも安全に使い続けられる仕組みが整っています。
ただし、インターネットを使う以上、ネットワーク環境が不安定な場合や、アクセス権が適切に管理されていない場合はリスクが高まることがあります。複数の端末から使える便利さと合わせて、適切なパスワード管理やアクセス制限を意識して運用することが大切です。
インストール型は自社でセキュリティポリシーを徹底できる
インストール型(オンプレミス型)は、自社のサーバーとネットワーク内でシステムを運用する仕組みです。
インターネットを経由しない環境を構築すれば、外部からの不正アクセスを大幅に減らすことができ、情報漏洩のリスクを抑えられます。自社のセキュリティポリシーに基づいて、細かなアクセス制限や管理体制を設定できる点は大きな強みです。
たとえば、サーバーへのアクセス権を厳しく管理したり、外部ネットワークから完全に切り離したりすることで、より強固なセキュリティ環境をつくることができます。
これにより、給食管理に関する機密情報を社内だけで安全に扱えるため、大きな施設や行政機関など、セキュリティを最優先したい現場ではインストール型が選ばれることがあります。
一方で、セキュリティの保守や更新は自社で行う必要があるため、専門知識を持つスタッフが必要になります。強固な体制を築ける反面、日常的な管理の負担が大きくなる点を理解しておくことが大切です。
クラウド型はどこからでもアクセスでき、複数施設での利用にも便利
クラウド型の大きな魅力は、インターネット環境があればどの端末からでもアクセスできる点です。パソコンはもちろん、タブレットやスマートフォンからもログインできるため、場所を選ばずに作業が進められます。
テレワークを取り入れたい施設や、複数の学校や給食センターで情報を共有したい場合には、とても便利な仕組みです。
たとえば、栄養士が自宅で献立作成を行い、現場職員が施設で内容を確認する、といった使い方も簡単にできます。
ただし、インターネットに接続できない環境では利用できないため、安定した通信環境の確保が前提となります。また、さまざまな端末からアクセスできる分、パスワード管理などの運用ルールをしっかり整えておくことが重要です。
インストール型は社外からのアクセスに手間がかかる
インストール型の場合、システムは社内ネットワーク内で動くため、基本的には職場のパソコンからでなければ利用できません。外部からアクセスするためには、VPN接続などの特別な設定が必要になり、利用する側にも管理する側にも手間がかかります。
また、アクセス環境を整えるにはネットワークの知識が必要なうえ、トラブルが発生した際には自社で対応しなければなりません。
外部との連携が少ない施設や、業務がすべて施設内で完結するような場合は問題ありませんが、複数の施設で情報を共有したい場合や、在宅環境から使いたいケースでは不便に感じる場面が出てきます。
とはいえ、外部から簡単にアクセスできないということは、それだけ安全性が高いともいえます。
まとめ
クラウド型とインストール型の給食管理システムには、それぞれに大きなメリットと注意点があります。クラウド型は初期費用が低く導入しやすいだけでなく、保守やバージョンアップを提供会社に任せられるため、担当者の負担を軽減できます。一方インストール型はカスタマイズの自由度が高く、施設独自の運用ルールに合わせた調整がしやすい点が魅力です。どちらが適しているかは施設の規模、運用体制、将来の計画によって異なります。今回紹介した違いを参考にしながら、自社に最適なシステムを選ぶことで、給食業務をより効率的に進め、安全で質の高いサービスを提供できるようになります。

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