学校給食における食品ロスの原因とその対策

公開日:2024/12/15
学校給食における食品ロスの原因とその対策

学校給食における食品ロスは、持続可能な社会の実現の観点から見て非常に深刻です。とくに子どもは好き嫌いの度合いや食事量の個人差が大きいため、それらの差に寄り添った対策が必要になります。そこで本記事では、学校給食で食品ロスが起こる原因とその対策事例について詳しく解説します。

そもそも食品ロスとは

食品ロス(フードロス)とは、本来食べられるにもかかわらず、廃棄されてしまう食品のことです。これにより、生産者の労力や消費者のお金が無駄になり、環境にも悪影響を与えるのです。

食品ロスの削減は、食料資源の有効活用や地球温暖化の抑制に貢献し、持続可能な社会の実現に寄与します。また、学校給食における食品ロスについても深刻な現状があります。環境省が平成27年度に行った調査によれば、児童1人当たりの年間の食品廃棄物の発生量の推計は17.2kgです。

そのうち、食べ残しが最も多く、7.1kg(約41%)を占めています。次いで、調理過程で生じた残渣が5.6kg(約33%)です。このデータからも、食品ロスは家庭や学校でも多く発生しており、改善が急務とされています。

学校給食で食品ロスが起こる原因

学校給食における食品ロスの原因は、調理残渣と食べ残しの2つに大別されます。調理残渣には、野菜の皮や芯など、給食を調理する際に必然的に発生するものが含まれます。これらは食材の性質上、避けられない部分です。

しかし、食べ残しによる食品ロスはより深刻な問題として捉えられており、その原因については具体的な対策が求められています。食べ残しの原因として挙げられる理由は主に3つです。

給食の量が多い

まず1つ目は「給食の量が多いから」です。子どもたちの食べる量には当然個人差があり、特に女子生徒の場合、男子に比べて食事の量が多すぎると感じることが多くなっています

調査によれば、女子生徒が給食の量を多すぎると感じ、残す割合は男子に比べ約2割高いという結果が出ています。栄養バランスを考慮して決められた給食の量ですが、個々の子どもの食べる量に合わせる調整が必要です。

給食の時間が短い

2つ目の理由は「食事の時間が短いから」です。子どもたちが給食を食べる時間が十分に確保されていないことが、食べ残しの一因です。

たとえば、給食前の授業が予定よりも長引くことや準備に時間がかかること、また食事中に友達とおしゃべりに夢中になってしまい食事に集中できないケースが多く見られます

これにより、食べきる前に食事時間が終わってしまい、残食が発生するという問題が生じています。この問題の解決には、適切な時間配分と食事環境の改善が必要です。

好き嫌い

3つ目の理由は「嫌いな食べ物があるから」です。特に野菜や豆類、きのこ類が苦手な子どもが多く、これらの食材が含まれるメニューは残食が増える傾向にあります。子どもたちの食材に対する好みや食習慣に配慮し、苦手な食材に対する理解を深める教育や工夫が必要です。

学校における食品ロスの対策事例

学校での食品ロス対策には、地域ごとにさまざまな工夫が取り入れられています。以下に、代表的な5つの事例を紹介します。

調理残渣を減らす

1つ目の対策は「調理残渣を減らす工夫」です。給食を調理する際にどうしても発生する野菜の皮や切りくずを最小限に抑えるため、野菜のカット方法を工夫し、廃棄物の量を減らす取り組みが行われています

また、調理残渣の水分を抜くことで重量を削減したり、調達計画を改善して食材の無駄を減らす工夫もされています。茨城県取手市では、切りくずとなる部分を献立に利用することで食品ロス削減に貢献しています。

給食時間の延長

2つ目の対策は「給食時間の延長」です。京都府宇治市の学校では、給食準備時間を短縮することで、実際の喫食時間を確保する取り組みが進められています。

授業終了後から給食開始までの時間を10分以内に設定し、その達成状況を記録・評価することで、食べ残しが大幅に減少しました。このように、給食時間を適切に確保することで、子どもたちがゆっくり食事を取る環境を整えることができます。

嫌いな食べ物への対策

3つ目は「嫌いな食べ物への対策」です。多くの子どもが嫌いな野菜や魚介類などが残されることが多いため、残食量の多いメニューを把握し、味付けや調理法に工夫を加えることで食べ残しを減らす試みが行われています。栄養バランスを崩さない範囲で、子どもたちが好む献立や味付けを採用することが重要です。

食育活動

4つ目は「食育活動による意識向上」です。山梨県甲府市では「ごみへらし隊」というプロジェクトが実施されており、子どもたちに食品ロスの重要性を教える活動が行われています

講座や工作教室、施設見学などを通じて、子どもたちの意識を高め、食べ残しの問題に対する理解を深めているのです。このような食育活動により、食品ロスの意識が子どもたちの間で浸透し、実際の残食量が減少しています。

食品ロスのリサイクル

5つ目は「食品ロスのリサイクル」です。渋谷区立加計塚小学校では、「KAKEZUKA FARM」というプロジェクトを通じて、給食残渣を校内で堆肥化し、学校の菜園で活用しています。子どもたちはこの堆肥化プロジェクトに参加し、日々の活動を通じて食品ロスのリサイクルの重要性を学んでいます。

まとめ

学校給食における食品ロスは、持続可能な社会の実現を妨げる深刻な問題です。ロスの主な原因は、調理残渣や食べ残しです。調理残渣は不可避な部分ですが、食べ残しの原因には、給食の量が多すぎることや時間が短すぎること、子どもの好き嫌いが挙げられます。対策として、地域ごとの工夫が進められており、給食時間の延長、調理法の工夫、食育活動の推進などが行われています。

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