給食の現場をひっ迫する物価高の原因とできる対策を紹介

公開日:2024/11/15
給食の現場をひっ迫する物価高の原因とできる対策を紹介

近年の物価高はとどまることを知らず、様々な製品・商品が値上がりしています。食材や食品もその例にもれず、給食現場の予算管理を難しいものにしています。物価高への対応は本来政治や行政の仕事ですが、現場でできる対策をとることで負担を軽減することが可能です。今回は、給食と物価高に焦点を当てて詳しく解説します。

近年の物価高の原因

近年の物価高には主に3つの要因があり、これらが相互に影響を与え合いながら価格の上昇を招いています。

コロナ禍

まず1つ目は、新型コロナウイルス感染症の影響です。コロナ禍による制限が港湾労働力の不足を招き、世界的な物流コストが上昇しています。食料自給率が低い日本では、こうした物流コストの増加が物価に与える影響が大きいです。

また、異常気象により食料供給が不足する一方で、世界経済がコロナから回復しつつあることによって食料品の需要が拡大していることも物価高の要因となっています。

ウクライナ情勢

2つ目の要因は、ウクライナ情勢の影響です。ロシアによるウクライナ侵攻が、原油や穀物の供給に大きな混乱をもたらしました。ウクライナ産のひまわり油の高騰により菜種油の需要が急増し、飲食店をはじめとする業界に打撃を与えたのです。

さらに、ウクライナとロシアが小麦やトウモロコシの主要輸出国であるため、その供給減少がパスタやパン、食肉などの価格高騰につながっています。加えて、ロシアへの経済制裁による原油供給の減少も燃料費の上昇を引き起こし、物流や包装コストの増加に拍車をかけています。

円安の進行

3つ目の要因は円安の進行です。日米の金利差が拡大した結果、円安が進行し、特に輸入に依存する食品やエネルギーの価格に大きな影響を与えています

2022年には一時的に円高への動きが見られましたが、その後も円相場は不安定な状態が続いています。今後も断続的な値上げが予測されており、物価高は長期的な問題となる可能性が高いです。

給食現場の現状

物価高の影響により、学校給食や介護施設の給食現場でもさまざまな変化が起きています。

学校給食への影響

まず、学校給食では、野菜に続き肉の価格も約1割上昇しており、給食のコストに大きな影響を与えています。特に肉は元々単価が高いため、1割の値上げでも大きな負担となります。

ある給食センターでは、昨年度と同じメニューを提供するためには、一日あたり約10万円の余分な費用がかかるとの報告もありました。このため、予算を超えないようにデザートなどの品数を減らす、安価な食材を活用するなど、コスト削減策を取る学校が増えています。

また、給食費を値上げする自治体も少なくありません。東京23区内のいくつかの区では、給食費の値上げ分を全額または一部公費で負担する対応が取られています。文部科学省は、物価高による給食費の負担増を抑えるため、臨時交付金を活用した支援策の推進を各自治体に求めています。

これは保護者の経済的負担を軽減するための対策であり、自治体ごとに対応が進められていますが、すべての地域で同じレベルの支援が行われているわけではありません。

介護施設の給食への影響

介護施設の給食現場でも、物価高の影響は深刻です。2022年4月から6月までの間に、約45.5%の施設で給食費の増加が報告されています。このような状況の中、多くの施設では食材の質を落とさざるを得なかったり、給食費の値上げを検討するケースが増加しています。

介護施設では高齢者の健康維持が重要な課題であり、食事の質が低下することは大きな問題です。しかし、施設の予算は限られており、物価高によって給食に使える予算が削られてしまう状況が続いています。

このため、質の高い食事を維持しながらコストを抑える方法を模索する施設が多いです。食材の購入先の見直しや、安価な食材への切り替えが進んでいます。

給食現場でできる対策を紹介

物価高が続く中、給食現場ではコストを抑えつつ、栄養バランスを維持するためにさまざまな工夫がされています。

予算に合わせた食材選び

まず、予算に合わせた食材選びが進んでおり、高騰している食材を避ける工夫がされています。例えば、牛肉の代わりにさつま揚げを使ったり、キュウリの代わりに茎わかめを使用するなど、代替食材を活用する例が増えています。

また、味付きのパンを割安のロールパンに変更したり、鶏モモ肉を鶏胸肉に置き換えるなどコスト削減の努力も見逃せません。さらに、加工済みの材料を使用しないことでコストダウンを図る企業もあり、手作りや作業の効率化に取り組むケースもあります。

仕入れコストの削減

仕入れコストを抑える工夫も進んでいます。具体的な工夫としては、値上げが予想される食材を事前にまとめて購入する方法が代表的です。名阪食品では、メーカーと交渉し、大量購入によって仕入れ価格を抑える工夫をしています。これにより、長期的なコスト削減ができるようになりました。

人件費の削減

さらに、人件費の削減も課題となっています。最低賃金の引き上げにより、食材費は安くても調理に時間がかかることで人件費が増加するケースが増えています。この問題に対しては、調理済み食品を効果的に活用することで、人件費を抑える方法が取られていることが多いです。

まとめ

近年の物価高により、給食現場は深刻な影響を受けています。新型コロナウイルスやウクライナ情勢、円安が主な要因であり、食材価格やエネルギーコストの上昇が学校や介護施設の給食に負担を強いているのです。これに対処するため、給食現場ではコスト削減の工夫が進められています。予算に合わせた食材選びや、値上げ前の食材の大量購入、加工済み食品の使用などがその例です。また、自治体の補助金活用や人件費削減の工夫も行われており、質を維持しながらコストを抑える取り組みが重要視されています。

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